きみのせかい

こんなに近くにいるのに、遠い。手を伸ばせば触れられるほど近い距離なのに、遠い。

君には君の世界があって、どんなに手を伸ばしても、私はその中に入ることができない。

足元にパックリと口を開けている暗闇に飲み込まれないようにすることで精一杯な私は、君のキラキラした世界に憧れる。

「助けて」なんて言わない。助けてもらうこともできないことも知っている。

でも、気づいて。振り向いて。私は君の笑顔がほしい。
ほんの少しの間でいいから、君の笑顔を独り占めさせて。

そうしたら、私は足元の暗闇を踏みつけて、君の手を掴むから。
それだけで私は笑っていられるから。


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