きみのせかい

「なんでもなくないだろ」
手を伸ばせば触れられるのに、遠いなんてもどかしい。
「せめて、隣にいる間くらい同じ世界にいろ」さすがに、そんな言葉は出せるわけがない。

なんて説明したらいいかなんて、わからない。
「私も好きなものの中に入れてほしい」なんて言うの?
そんなの面倒臭いどころじゃないよ。

何も言わない。本当にどうした?
「あ〜あ」

溜息。そりゃあ、そうだよね。
私も面倒臭い。でも、どうしたらいいか、わからないよ。


「ん?」
「なに?」
「なんでもない」

「やっと笑った」
「ずっと笑ってる」
「嘘つき」
「嘘じゃない」
「泣きそうだった」
「手、つないでいてくれるなら、いつでも笑ってる」
「なにそれ?」
「なんでもない」
「嘘つき。でも、まあ、いいか」
「なにそれ?」
「なんでもない」

違う世界に行かないなら、それで、いいよ。

「100%誰かと共有することはできない」という圧倒的な事実の前に、もどかしさや痛みを抱えて立ち尽くすことを誰しも一度は経験しているのではないかと思います。「アタリマエのこと」を前に、常に人は賢く、一方で臆病に対処しているのだと思います。だから、彼らも本当に不安なことは口にすることはないでしょうし、もちろん再起不能にはなりません。

人工的に生み出した常識とは違う、ただ訪れる事象の前では無力を認めざるをえません。自分自身が真実としたもののほか、答えもなければ、すがりつけるものもないのです。何かを心地よいと感じるなら、誰かと一緒にいることがうれしいなら、それが一つの真実で、圧倒的な事実に不安感じているより、純粋にそれを幸せと感じればいいのだと思います。

彼女にとっては手をつなぐということが、彼と同じ世界にいると信じられる行為であり、それで不安を忘れることができるという認識です。彼にとっては、自分を見てくれたり、返事したりという、自分に対する反応があるということが、同じ世界であるという行為です。なんとなく、男女の思考で考えると逆が多いような気がしますが、この話では、そのようにしてしまいました。

補足しないとよくわからないようなものを作ってしまい軽く凹みました。絵と文、という形式のものを作ってみたいというだけで、構成もあまり考えずイメージで書き出してしまったのを話にしたのが敗因です。長編は、きちんとしているので見捨てないで!!

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